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会見場で見られる選手の素顔 

  テニスの大会では、大会側が選手に試合後の会見を要請した場合、それに応じなければならいという決まりがある(すっぽかしたり断ったりすると罰金を払わなければならない)。で、この会見、選手のキャラクターや素顔が垣間見られて、かなり楽しかったりする。
  本日、男子はフェデラー、女子はシャラポワの優勝で幕を閉じたパシフィック・ライフ・オープンは、賞金額、ポイント共にグランドスラム大会に次ぐ規模で、男女ともに多くの有力選手が参戦している。それだけにいろんなトッププレイヤーたちがインタビュールームに顔を出し、名言・失言の数々を残していったのだが、やっぱり今大会最大の注目選手は、復帰後アメリカ初上陸となるマルチナ・ヒンギス。
  ヒンギスと言えば、90年代後半の女子テニス界を席巻したいわずと知れた女王だが、“爆弾発言女王”としても名をはせていた(らしい。少なくてもメディアでの扱い的にはそうだった)。例えば、モーレスモ(レズであることを公言している)に対する「あれは完全に男でしょ」発言やら、セレナ・ウィリアムズに対する「人間とは思えない」発言などなど、特にヒンギスの敗戦の翌日などには、新聞等に彼女の“やっちゃったコメント”が踊ったものだった。
  昨年末、世界中のテニス関係者やファンを震撼させた電撃復帰宣言後も、「ダベンポートがまだあれだけやれてる姿を見れば、私もできるって思うじゃない」や、「シャラポワのどこが凄いのか、よく解らない」などのコメントが大々的に取り上げられる始末。ファンやメディアも彼女の相変わらずのヤンチャっぷりを期待している感がありありとしていたのだった。
 
  そこで今大会、わたしも彼女のそんな失言を、鵜の目鷹の目で待ち構えていたのだったが……なんというか、すごくオトナなのである。もちろん、長年の宿敵・ダベンポートをやぶるなど全体的に調子が良かったこともあるだろうけれど、基本的に質問に対しては丁寧に応対し、ときにユーモアも織り交ぜながら終始なごやかな雰囲気で受け答えしていたのだ。ヒンギス節を期待していた身としては、ちょっぴり肩透かし。
  さらには、今大会の日程や今年からのWTAポイントシステムの変更にも言及し、
「テレビや興行的な理由からだろうけれど、朝の11時に最初の試合が始まり、最後の試合が10時頃から始まるというのは、正しいこととは思えない。これに関しては、わたしたち選手は何らかの行動を起こさなくてはならない」
と、まるで選手全体を代表するかのような凛とした発言。ツアーから離れテニス界を客観的に眺めたことが、彼女に問題意識を植え付けたのだろうか? 自らも、過密なスケジュールのせいで慢性的な怪我を抱え、そのためツアーを去ることを余儀なくされたという経緯があるだけに、「自分のような思いを他の選手にさせてはならない」という使命感に燃えているのかもしれない。ま、「わたしは朝が苦手なの。11時はわたしにとって活動時間じゃないわ」(本人談)というのが、真の動機付けかもしれないが……。
  そんなヒンギスの一連の発言を聞いたとき、ひとつ思い出したことがあった。シャラポワは昨年から慢性的な肩の怪我に悩まされており、しかも、誰も抜本的な理由が解っていないという。そのことをアメリカ人テニス記者に話したら、
「どうして誰も理由が解らないか、解る?」
と逆に聞かれた。医者が解らないものがわたしに解る訳ないじゃないか……と思っていたら、
「その理由は、怪我なんてしてないからよ。でもスポンサーやらの都合があるから、大会に出ない訳にはいけない。だから、怪我をしているってことにしているの。そうでもしなければ、労働組合もない選手たちは潰されちゃうわ」
  と、大真面目な顔で語ったのだった。
  果たして彼女の言っていることが真実か否か――それは解らないが、少なくともそのような憶測が真実味を帯びるほどに、選手たちは疲弊しているのだろう。今後のヒンギスのアクションに期待したい。

 その“肩の怪我に苦しめられているシャラポワ”ちゃんだが、今大会はセットをひとつも落とすことなく優勝するなど、絶好調。会見場でも舌好調で、特にヒンギスに勝ったあとは終始ご機嫌。記者たちから
「ディフェンスはここ数ヶ月でどんどん良くなってるね」
「ライジングショットが上手くなったじゃない」
等々のコメントを頂戴した彼女は、
「ワ〜オ!? わたし、こんなに記者会見で褒められたの初めてよ! 『ディフェンスが良くなった』『ライジングが打ててる』……ちょっとちょっと、どうしちゃったのよ! あっ、でもサーブは酷いって言うんでしょ? その話はナシね」
と大興奮。
  その後も、試合中に観客席から「マルチナ、彼女(マリア)は疲れてるぞ!」との声が飛んだことに関して、
「あの声援のおかげで、より頑張れたわ。あの後、立て続けにエースを決めたもの。トラックにちょっかい出しちゃダメよ。パンケーキになっちゃうから(トラックにひかれてペッチャンコになっちゃう……という意味合いのようです)」
とのジョークを飛ばして笑いを誘い、さらには、
「面白かったのは、あのあと例の声援を飛ばした彼、わたしのプレイに対して拍手するようになったのよ。たぶんビビッタんじゃないかしら?」
と言って、強張った顔でぎこちなく拍手をする哀れな声の主のマネまでしてくれたのだった。
  決勝戦後の会見でも、もちろんニコニコ。クジラの姿を模した優勝トロフィー(大会スポンサーのエンブレムに准じている)についてコメントを求められた際にも、
「あれねぇ、すっごく重いのよ。重石に使えるわね……っていうのは冗談で、真面目な話、持ち上げることができなかったんだもの。あっ、肩を鍛えるのにちょうど良いかも!」
と、ジョークづくめ。最もあんなもん、ネタにするくらいしかコメントのしようが無いだろうけれど。

 とまあ、今回いろんな選手の会見を見ていて気がついたことは、当たり前なんだけれど、やはり勝ったあとはみんなご機嫌で、負けたあとは仏頂面だってこと(唯一の例外はナダル。彼は敗戦後も言い訳ひとつせず、非常に好感が持てた。ナダルは関係者の間で人気が高いと聞いていたが、その理由が解った気がする。わたしも彼のファンになったもの)。さすがの“新生”ヒンギスも、シャラポワに負けた後の会見の終盤では、かなりなおざりなリアクションしかしていなかった。
  そこで、ふと気になった。みんなロジャー・フェデラーのことを、「とっても良い人」と評する。でも何しろ、フェデラーは勝ちっぱなしの人。試合後の会見で良い人なのは当たり前と言えば当たり前。本当はすっごくイヤな人だったとしても、わたしは大して驚かない。(2006年3月19日) 

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