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アメリカ、イチロー報道の真実

  国民栄誉賞話題再燃? 親族・恩師はもちろん、各界著名人が次々に祝辞? ネットでしか日本での報道の模様をチェックすることはできませんが、イチローのメジャーリーグ年間最多安打記録更新の報で、日本はエラいことになっているらしいことは解ります。では、アメリカではどうなのか? そのあたりのことは日本のファンも気になっているらしく、ネット上でも様々な疑問や憶測を目にします。
  そこで、わたしの知りえる範囲ではありますが、こちらでの報道や話題性を“ネガティブ”“ポジティブ”に分けてお知らせしたいと思います。

■ポジティブ■
【記録更新に対する反感は?】
  よく、日本のファンサイトやメディアなどで「外国人であるイチローが記録を作ることが、地元の人の反感を勝っているのでは?」と危惧する声を見かけたが、そのような雰囲気や論調はあまり感じなかった。ベースボールコミッショナーのBud Selig氏も、記録更新前から「イチローの記録挑戦は偉大なことだし、是非更新してほしい」とエールを送り、全面的に支援の姿勢を提示。記録更新後も「イチロー(の記録)は、本来値すべき称賛や注目を得ていない」と、彼の記録を世論以上に高く評価する発言をしていた。Selig氏は野球のグローバル化を掲げている人物なので、そのような立ち位置も影響していたかもしれない。いずれにしろ、ベーブ・ルースのHR記録をロジャー・マリスが破ったときに勃発したような、年間試合数の違いなどによる物議や悲劇とは、ほとんど無縁だった。
  ただそれは、元年間最多安打記録保持者のGeorge Sislerなる人物が、ベーブ・ルースほどのスターではなかったというのが、最大の理由のようにも思う。これが、タイ・カップやピート・ローズら往年のスターだったら、やはりこうはいかなかっただろう。

【メディアでの取り上げられ方は?】
  日本と比べれば報道熱は静かなものだったろうが、さすがに9月末にはアメリカのメディアも大挙しあれやこれやと質問攻勢をかけたらしく、辟易したイチローの「僕のアンダーウェアの色も知りたいですか? あなたたち(米国メディア)も、最近は日本のメディアと同じようなことをし始めましたね」とのコメントが掲載されていた。記録とは積み重ねだという信念を持つ彼のこと、記録更新直前になり突如押しかけてきた記者らに、皮肉のひとつも言いたくなったのだろう。
 
  アメリカ最大のスポーツ誌である『Sports Illustrated』は、イチローの記録更新直前の号で見開きの特集を組み「ヒット・クラフトマンの彼のプレイから目を離してはいけない。彼がいかにヒットを打っているか、そして彼がいかに全てのプレイに対して真摯であるかに注目せよ」との論調の記事を掲載。さらに、コース別(高め、外角など)打率やヒット分布図を示し、彼の打撃を細かく分析していた。
 
  全米最大のスポーツネットワークであるESPNは、公式HPで記録更新の20本ほど前からカウントダウンコーナーを特設し、実際に記録が更新された日はトップに記事を掲載
  テレビの方でも、スポーツニュースの途中にも関わらず、イチローの打席のときだけ画面を中継に切り替えるほどのフィーチャーっぷり。また記録達成当日は、画面の右下に「イチロー、新記録達成」の文字情報を常に表示し続けていた。もちろんそれ以外にも、イチローの記録更新までの足跡を簡単に振り返る10分ほどの特別スポットが用意され、記録更新の瞬間やSislerの娘さんと話している様子などを流していた。

 

■ネガティブ■
【もっと、プロ意識を持て?】
  手元に記事が残っていないので正確なことは解らなくなってしまったのだが、イチローの記録挑戦が現実味を帯びてきた9月中旬ごろ、イチローが送りバント気味のセフティーバントを試みたことがあった(結果はアウト)。この選択に対し、地元のメディアたちは随分と訝しがり、さらに不平を述べたという。曰く「今のマリナーズで、イチローがランナーを進塁させることに何の意味があるというんだ!? 観客もイチローのヒットを見に来てるんだから、打ちに行かなきゃダメだ!!」。
  イチローの「for the team」精神は、アメリカ人をイライラさせてしまったようだ。

【メディアでの論調は……?】
  正直なことを言うとイチローの記録更新への挑戦は、記録まで残り20本を切るくらいまで全くといってよいほど話題にはなっていなかった(少なくてもLAでは)。イチローが9月23日に4安打を放ち記録まで10本にせまったときも、南カリフォルニアのスポーツ番組は
「いや〜、またイチロー、打ったね。テニスみたいに簡単に打つな〜」
の一言コメントを残しただけで、次の話題に移ってしまった。
 
  さらに、イチローの記録更新に関する最大のネガティブ意見は、人種の問題よりも「彼みたいにシングルばかり狙ってたら誰だって打てるさ」というもの。『USA Today』の記事でも「イチローが安打記録に挑戦し、観客はあくびをする」などと書いているものがあった。イチローの登場によりHR偏重のメジャーの傾向が変わりつつあると言われているが、そうは言っても、やはりHRは野球の花。今年は、バリー・ボンズが通算700本塁打を達成したので、よりその傾向に拍車がかかったのかもしれない。まあ考えてみれば日本でも、イチローが記録更新するまで誰が年間最多安打の日本記録保持者だったか、多くの人が知らなかったのでは。

 記録を作るまでに160試合を要したというのも、突っ込みの要因になってしまったようだ。記録更新直前の『Sports Illustrated』には、「154試合(シズラーが記録を作った際の年間試合数)を終えた時点で、彼は記録まで7本足りない。はい、これにて終了! 神戸での釣りを楽しんでくれ。そして来年の春季キャンプでお会いしましょう」とのライターのコメントが掲載された。しかもこの記事は、試合数の問題を本当に語りたいのではなく、単に「現在のスポーツ界には、くだらない“記録”が多すぎる」というテーマの引き合いに出されたに過ぎなかった(わたしはこの記事を読んだとき、抗議の手紙を書こうとペンを手にした)。


■ポジティブでもネガティブでもないけれど……■

【王さんまでが、引き合いに!?】
  これは『Sports Illustrated』のネット上のみの記事だったのだが、「今回のイチローの記録と王貞治氏のHR世界記録、日本人はどっちをより大きく捕らえているか!?」というテーマを論じていた。記事によれば、同誌はスポーツ関係者(記者など)を中心に50人強の日本人にアンケートを取ったらしいのだが、その結果、「王さんの記録の方が偉大」と応えた人が6割に達したという。主な理由は「王さんのとき、日本は今のように力のある国ではなかった。その中での記録達成は、国民全体に夢と希望を与えた」というもの。アンケートの対象となった人に年配者が多かったのも、ひとつの要因だったらしい。
  いずれにしろ、記事自体は「確かに当時の日本の背景などもあるだろうが、日本の記録とメジャーのそれを比べるのはナン・センス。イチローは、メジャーでプレイし正真正銘の記録を作るのだから、こっちの方が評価できる」との結論で締めくくっていた。
  王さんの記録更新時の様子を知らないわたしとしては「ごもっとも」と思うのだが、これ、ボンズの記録更新に向けての牽制ではないかという気もする。ボンズの現在の通算HRは、703本。ハンク・アーロンの記録まで52本に迫っている。彼の例年のペースからいけば、1〜2年の内に記録を更新する可能性が高い。そんなときに「まあでも、世界記録は王さんが持ってるから」なんて横槍が入ったら、せっかくのお祭り気分も台無し、なので。
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